はじめに閲覧されるべきもの

大切なことを書いたり、書かなかったりします。

紙とペンと未来の話 其の壱

父は機械音痴だ。
父は携帯電話を持っているが、メールは使えない。


「出会い系メールにいちいち反応するから」という理由で
母によってメール機能を停止させられている。
あと、そもそも漢字変換が出来ないし、
濁点とか、小さい「や」「ゆ」「よ」とか打てない。


昔、父は自分では使えない電子手帳を小学生の僕にくれたことがある。


その頃の僕は任天堂による洗礼を受けており、
赤いオーバーオールにヒゲをはやし帽子をかぶったおっさんに
精神と放課後の時間を支配されていた。
自然とコンピュータに触れはじめていた。


父は製紙会社に勤め、紙を販売する営業をしていた。
車の運転と、お喋りが上手かった。
父はビデオの録画予約は出来ないが、
指先だけで紙の厚さや枚数を当てることが出来た。


僕は

「これから情報化社会がくるんだよ。紙なんてもうすぐ無くなっちゃうよ。」

と、父に言った。


父は

「紙は無くならないよ。」

と、僕に言った。


あれから、年号が替わり、
世紀が替わり、
SMAPは5人になり、
エアマックスを履くことも、
スポエネを飲むことも、
電話ボックスにカセット(ハイポジ)を忘れることも無くなった。


僕は就職し、
父は定年退職を迎えた。


インターネットと高速通信網の普及に伴い、
世界中の人々とリアルタイムで連絡を取れる環境が整った。


しかし、未だ実家の父に連絡をとるのは難しい。
父は携帯電話を携帯していない。
父と連絡を取るには一旦母の携帯電話に電話する必要があった。


僕は、母に電話をかけた。


再来週仕事を休んで東京案内するから夫婦で上京して来いと、母に伝えた。


僕はGoogleMapで合羽橋商店街の駐車場の場所を調べ、
インターネットでホテルの予約をし、
予定を手元の手帳に書き込んだ。


紙は未だ、無くなってはいない。


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