はじめに閲覧されるべきもの

大切なことを書いたり、書かなかったりします。

劇団ひとりっこ

空港


『おかあさん!ねぇ!おかあさん!あのね!あのね!』


おかあさん!

ねえ!おかあさん!

ぼくのだいすきなおかあさん。

おかあさん。ぼく、となりにいるのに

なんで返事をしてくれないの?

おかあさん。ぼく、話したいのに

なんで、いつもりんごマークのケータイを見ているの?

おかあさん。ぼくのこと、きらいになっちゃったのかな。

このまえ、おうちのかべに落書きしちゃったから

ぼくのこと、きらいになっちゃったのかな。


ううん。

ぼくはひとりっこだし

おかあさんがぼくのことを

いっぱいすきでいてくれてることを知ってる。


そうか。

おかあさんはオトナだから忙しいんだ。

ぼくがコドモだから

おかあさんはオトナだから

きっとおかあさんはぼくと話していてつまらないんだ。


そういえば夜のごはんのときにも

おかあさんはおとうさんと楽しそうに話してる。

ぼくと話しているときとちょっと違う。


ぼくはなんとなく気づいてしまった。

ぼくの家にコドモは僕しかいないのだ。


おとうさんもおかあさんもぼくをコドモ扱いする。

ゲームでいっしょに遊んでいても

おとうさんはぼくがコドモだからなんとなく手加減したりする。

オトナの都合で遊んでくれなかったりする。


ぼくの家にぼくと対等に話してくれるコドモは存在しないのだ。


おかあさん。

ぼくのだいすきなおかあさん。

いつもりんごのマークのケータイを見ている、おかあさん。

ぼくがコドモだから、相手をしてくれないのかな?

ぼくがオトナになったら、ぼくと話してくれるのかな?


おかあさん。

ぼくはがんばって、はやく一人前のオトナになるよ。

嫌いなニンジンも、がんばって食べるよ。


いつもりんごのマークのケータイを見ている、おかあさん。

ぼくはもうお母さんの邪魔をしないよ。

ぼくは、ぼく自身の世界で遊ぶからもうだいじょうぶだよ。


きっと今日がぼくの独立記念日(インデペンデンス・デイ)なんだ。